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神戸大学大学院工学研究科・システム情報学研究科紀要, No. 5, pp. 25-32, 2013
doi:10.5047/gseku.j.2013.004

保育施設における市街地避難対応力に関する事例研究
—2011年東北地方太平洋沖地震に伴う津波からの気仙沼市における避難を例として—

ピニェイロ アベウ タイチ コンノ1・北後 明彦2

1工学研究科建築学専攻
2都市安全研究センター

(受付:November 26, 2013 受理:January 7, 2014 公開:February 3, 2014)

キーワード: 市街地避難 、津波避難施設、 避難経路、 乳幼児、 多人数用ベビーカート

本研究では、保育施設の職員及び園児が力を合わせて市街地で避難を行うための能力(市街地避難対応力)の形成過程及び有効性を、気仙沼市の沿岸部にあった保育施設において東日本大震災時の津波避難を行った事例を分析することにより明らかとした。この保育施設では、約1.4km離れた場所に高台があるが、高台に至る急な上り坂では避難しにくくなる懸念があり、地震発生前から避難先は約100m先に位置する3階建ての津波避難施設としていた。3歳〜5歳児は年齢別集団のクラスごとに誘導員引率の下に手を繋いで2列で歩行することによる避難、0・1歳児及び2歳児はおんぶ紐での背負い及び多人数用ベビーカート(バギー)に乗せた避難がなされた。地震直後に避難開始が決断されたこと、避難方法などが事前に計画されるとともに訓練で習熟されていたこと、施設周辺の人々との協力体制ができていたこと、避難手段であるバギーの整備がなされていたこと、及び、避難経路の整備がなされていたこと等が有効な市街地避難対応力となって迅速な対応につながった。避難先の津波避難施設は2階まで水没し、津波襲来・津波火災の危険性が甚大になるにつれて、建物内で園児の避難場所を何度も変更する必要性が生じた。国内各地の沿岸部に位置する保育施設では、津波火災などの二次災害が想定される場合には、避難先をこれらの二次災害から安全な場所に確保する必要があるが、その際の避難計画を評価する上で、引率下の園児年齢別歩行速度、バギーを用いた避難速度、避難経路の段差・勾配の影響等、市街地避難対応力の構成要素が重要となることを指摘した。


[Full text] (PDF 1.3 MB)